チームの強さを決める上で、サッカー選手と監督ってどちらが重要ですか?
ある人は言います。「監督で勝負が決まることは多い。そこで決定的な差がつくんだよ」と。ある人はこう反論します。「でも中学生とプロが戦ったら、監督なんて関係なくプロが勝つだろ?監督の影響は小さい」と。
中学生の吹奏楽部と、プロのオーケストラにおいて、指揮者の腕がどれほど重要なのかという話で考えてみてもいいでしょう。「指揮者なんかいなくてもプロは練習なしの一発で中学生を超えてくるでしょ?指揮者なんかいらなくない?」なんて話をする人がいたらどうでしょう。
なんかモヤモヤしませんか?さて本当のところはどうなのか、練習がてら、説明してみましょう。説明力の向上や、物事の道理、構図を捉える練習になりますね。近くの賢そうな人に説明させてみてください(いや人を試すようなことはやめましょう)。
まぁ簡単な話です。
中学生とプロのように大きな範囲で眺めたら・・・カメラを思い切り引いて眺めたら・・・そりゃもう選手や奏者の腕の差がもろに出ます。監督や指揮者の腕でひっくり返せるようなものではないでしょう。しかし、実際は、中学生とプロが競うような場というのは滅多にありませんし、「全日本吹奏楽コンクール」「Jリーグ」のようにレベル差が一定の範囲に収まっている同士の争いばかり目にするわけです。普段見ているような戦いにおいては、レベル差が一定の範囲に収まっているだけに、監督や指揮者の腕がかなり影響してくるでしょう。これは、グラフで、どこの範囲を見ているかという視点で捉えると分かりやすいですね。
だから「サッカー選手と監督はどちらが重要か」の話が噛み合わないわけです。片方は全体を眺める「引いたカメラ」での監督の影響度を語っていて、もう片方は、プロの勝負など「普通によく見る争い(限られた実力差の争い)」を前提に監督の影響度を語っていたりするからです。カメラをアップにしているのか引いているのかも揃えずに「選手と監督はどちらがどれくらい重要か」を語っても、噛み合うわけないですよね。
答えを聞いてみれば簡単な話ですが、説明するのは意外と難しいかもしれません。
これは教訓も特になく、物事の眺め方を一つ増やす目的で書いていますが、世の中のアジテーター(扇動者)はこういったレトリックを平気で使ってきます。また、こっそりグラフの下のほうを削って大げさに差があるように見せかけたりするのは、大手企業の製品でも平気でやることでしょう(以前に校長が飲んだプロテインは無理筋すぎるグラフを出していました…)。カメラを動かすことで、前提が変わり、内容の説得力を恣意的に(思うがままに)操れるということを頭に入れておいてください。グラフだけでなく、それを捉えるカメラのほうを動かすのです。
ちなみに・・・監督も指揮者も、その影響は、もちろん絶大です。軽視してはなりません。