タイトル「石橋を叩いて・・・」
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挿絵【事例】

とあるカップルは半年付き合っているが、ここ一カ月ほど会えていない。というのも彼氏の仕事がもうすぐ大きな節目だからであり、彼氏は目に見えて忙しいのである。そして彼女は、しばらくは「体調大丈夫?」「がんばってね」などと気遣うメールをしていたが、最近は「メール送り過ぎ?」とか「うざい?」とか送り続けてしまう。

そして、やっと彼氏の重要な任務が終わったところで、彼女は「もう別れたい?いろいろごめんね」と言ってしまったのである。彼氏も「別れようか。おれでは幸せにできないから」と同意したから、彼女はショックを受けたし、その後は撤回もできず結局別れることになったのであった。
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play_arrow 彼氏が別れを主導したと言える play_arrow 彼女は孤独を愛しているし一人になりたい気持ちが強かったと言える play_arrow 彼女はもちろん単純に別れたかったわけではないと言える

【校長の解説】

挿絵彼氏が言う「おれでは幸せにできない」というのは、罪悪感を抱えた人がよく言うセリフである。君のネガティブには自分のポジティブでは足りない、という降伏であり、端的に言えば「もう疲れた」ということでもある。

彼女は別れたかったわけではない。別れたくないけど不安だったのである。内心、別れるのではないか、振られるのではないか、という恐れが高まっていて、それを払拭できなかった。別れる、振られる、を心のどこかでは信じてしまっているから、「体調大丈夫?」という彼への気遣いも、いつのまにか「メール送り過ぎ?」「うざい?」という自分中心の話になってしまった。その不安がついつい話題の中心になってしまったのである。

例えば、別れる、いや別れない、というところを往復することはできても、なかなか「別れるとか別れないとかどうでもいいし気にならない」というところまではいけないものである。彼女の心は頑なに悲惨な未来を思い描いてしまっているからである。

結局、彼女は不安になりすぎて、ずっと二人の関係の強度を確かめつづけた。石橋を、ひたすら叩き続けたのである。相手が怒ったりうんざりするまで「大丈夫?嫌いじゃない?私のこと捨てない?」と聞き続けたようなものである。相手が怒ったりうんざりするまで聞けば、相手はどこかで限界を迎えるだろう。問題文の彼は忙しい時期に聞かれたからか、その限界はわりとすぐにきた。しかし彼がうんざりするまで聞くのであれば、彼が忙しくなくたって、いつかはこうなったことだろう。

本当は、問題文の彼は、彼女を諭したり彼女に怒ったりしながらも余裕をつくり、愛情で包み、その不安を軽減させてあげられればよかった。それが理想ではあるが、それはいつでも余裕との兼ね合いだから、彼にはそれだけのキャパはなかったのである。

話は戻るが、つまりネガティブな確信が強すぎると、実際にそのネガティブな確信の通りに二人の関係性は壊れていく、ということである。少しのことでも不安になるし、表情が曇れば相手のカバーにも限界がくる。問題文の彼女がそうであったように、大丈夫か、振られないか、ばかりが心の中を占めて、彼と幸せになれるかという方向に頭がまわらない。そして石橋が壊れるまで石橋を叩き、いつか石橋は壊れるのである。石橋ほどの強度がなければもっと早く壊れるだろう。

ネガティブなのは仕方がないが、その出方をそれなりに工夫しなければならないだろう。垂れ流すことをやめて、決めつけや思い込みや自滅をなくすだけでも、安定感は多少増す。相手や未来を信じられなくてもいいが、勝手な諦めや妄想に負けない努力はしたほうがいい。そのうち信頼関係が築かれたり、相手からの愛情を信じることができるかもしれない。

自分の妄想に負けない、最低限フラットな状態でいる。それぐらいのハードルでも、なかなか難しいものではあるのだが。