タイトル「まず肯定」
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挿絵【事例】

とあるカップルの彼女は、あるとき大学の授業で先生に褒められたため、彼氏に自慢したら「まぁ社会では役に立たないけどな」と言われたのである。これだけなら良いのだが、例えば面白かった映画の話をすると「いや、それだったら○○のほうが面白い」だとか、好きなアーティストについて話すと「でも同じような曲ばかり」だとか言ってくる。

彼女は一度、彼氏に「もっと楽しく話せないわけ?」と怒ったのである。しかし「いつもお前と同じ価値観でいろと?」「お前の意見はいつも正しいと?」と言われて、なんだかよく分からず諦めたのであった。
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play_arrow 彼女の怒りに対して、彼氏の反論は噛み合っていないと言える play_arrow 彼女は、彼氏が持つ異なる価値観を尊重できていないと言える play_arrow 彼氏は要するに彼女のことが嫌いなのだと言える

【校長の解説】

挿絵彼氏は「いつもお前と同じ価値観でいろと?」「お前の意見はいつも正しいと?」と言っているが、彼女はべつに自分と同じ価値観でいろとか、自分の言っていることはいつも正しいだとか、そんなことは思っていないだろう。ただ頭ごなしに否定的なことを言わないでほしいのである。

大学の授業で褒められて嬉しかったということ自体は、否定のしどころがない単純な事実である。彼女がそう感じたのだから「よかったな」とか「なんか嬉しそうだな」とか、そこまでいかなくとも「へー」とか言えばいいのである。「まぁ社会では役に立たないけどな」などと言う必要があるとは思えないが、それが必要なことだとしても、まずは彼女が褒められて嬉しかったという事実を肯定してから、自分の意見や感じ方を言えばいいだろう。

彼女が面白かった映画の話をしたとき、「いや、それだったら○○のほうが面白い」と、自分が面白かった映画について言うのは良いのである。しかし「いや」といきなり言わず、彼女が面白いと感じたことは紛れもない事実なんだから「そうなんだ」「そんな面白かったのか」と言えばいいのである。その上で「おれはそれも観たけど、○○のほうが面白いと感じた」と言うのなら、彼女もそこまで嫌な気持ちにならないだろう。

いちいち人の言うことに否定的なことを言いたくなる人、特に最初から「いや」「でも」「というか」と言ってしまう人は、要注意である。性格の悪い人、嫌な人だと思われるのではないだろうか。

こういう傾向のある人は、相手の言うことを否定する言葉を一言目に発しない、できるだけ一言目は相手の言うことを肯定する、という縛りで一カ月ぐらい過ごしてみると良い。校長も若いころに実践したことがあるが、これだけでコミュニケーションの取り方がだいぶ変わるものである。特に男の場合は、女とのコミュニケーションが格段に上手になる。

例えば話し相手が、超絶につまらない映画を「すんごく面白かった」と言ったとする。そこで「どこがだよ」「歴史に残るクソ映画だろ」と言う前に、まず「そう思うのかぁ」と相手の感じ方を認める一言を発する。いきなり「いやいや、どこが」と言わないようにする。「なるほど」「へー」「あぁそうか」「うん」「わかる」「そうかも」と、否定しない一言を発してから、同調するなり違う見解や気持ちを言うなりするのである。

これは、単にコミュニケーションだけの話ではなく、異なる価値観を認める姿勢につながるのである。人の感じ方や価値観を否定するのと、肯定した上で自分の感じ方や価値観を言うのでは、印象が段違いだろう。

本当は「どこがだよ」「歴史に残るクソ映画だろ」と言ってもいいのである。相手のことを肯定している雰囲気がにじみ出ていれば、毒を吐いてもいいし、そういう言動のほうがパーソナリティに合っているのならそのほうが良い。最初に肯定する言葉からまず始めるなんて、その人らしさが死んでしまうかもしれないから、みんなそうすべきとは思わない。ただ、相手を肯定している雰囲気が出ていない人、ただの嫌なやつになってしまっている人は、毒を吐く前にまずコミュニケーションの取り方(言葉)から先行させて直したほうがいいだろう。

本来は、「歴史に残るクソ映画だろ」と頭ごなしに言ってもなお、相手の価値観や相手自身を肯定していることが伝わるような自分(そういう人柄)でいることが理想的ではある。