タイトル「なんでもっと早く」
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挿絵【事例】

とある大学生カップルの彼女は、彼氏と音楽趣味がだいたい一緒で、わりと共通のバンドを好きになっている。だが、なぜか彼氏はライブに行こうとしないし(行ったことがないようだし)、誘っても「えぇー。いや、おれはいいよー疲れそうだし」などと言われて拒否される。

だが、ある音楽フェスで、二人の好きなバンドが何組も登場するということで、彼女が半ば無理矢理にチケットを取って彼を説得したところ、OKが出たのである。そして実際に行ってみると、彼氏は想像以上に大はしゃぎ、彼女も引くほどのテンションの上がりっぷりで、彼女は「今までの拒否は何だったのか」と思ったのであった。
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play_arrow 彼氏は彼女との外出があまり好きではないのだと言える play_arrow 彼氏は仕方なく楽しんでいるふりをしていると言える play_arrow 彼氏は素直に行っておいたほうが良かったと言える

【校長の解説】

挿絵なぜ彼氏は今まで彼女の誘いを拒否していたのか。その理由はいくつか考えられる。

一つは、「誰かのコントロール下に入ることを嫌う性格」だった可能性。自立的な人に多いが、例えば自分で調べて知ったレストランは抵抗なく入るのに、オススメされると腰が重い、ということがある。それは自分の意思によるコントロールを失いたくないのである。人の言う通りにするときにはかなり慎重になるという性格である。

二つめの可能性は、単にビビリ、不安、警戒しすぎ、という理由である。未知のものに対しては多かれ少なかれ誰でも怖がりなのだが、それがやや強めに出る人がいる。勝手を知ってしまえば調子に乗るのだが、知るまでは非常に慎重になるタイプである。こういう人は基本的に「ちゃんとできることだけやる」から広い世界に飛び出していかないのだが、その慎重さを乗り越えていざ新しいことに手を出してみると、世界が広がった喜びがあったり失敗を恐れる性格が作用して、人並み以上に「ちゃんと」「徹底的に」やることが多い。

三つめの可能性は、価値あることへの抵抗が強い、という理由である。例えば小中学生などがファッションに興味を持ったときに、親などもファッションに興味を持っていれば入っていきやすいだろうが、恥ずかしいような感じがして抵抗があるという人も多いだろう。ちょっとやってみたいことでも、勧められると、「えぇ~おれはいいよ~(もじもじ)」と言いたくなるような心理である。価値あることは自分に似合わないとかもったいないという心理もあるし、うまくいかないと怖いというのもある。だがやはり一度その世界に飛び込んでみると、嬉しくて、今までのもじもじはなんだったんだというぐらい積極的になったりする。

校長自身は警戒心が強くて慎重というのもあるし、価値あることへの抵抗が強いというのもあるから、問題文の彼氏の気持ちはよく分かる。カメラ趣味も最初はもじもじしていたが、友人に言われるがままに買い揃えると、その後はカメラ雑誌を読みふけり、そこそこ詳しくなるまではやる。人から勧められたものに稀にハマると、いつのまにかその勧めた人はやめていて、自分だけずっとやっていたということもある。逆の成功例(早くに踏み出した事例)で言えば、校長が18歳のころ、月に8万円のバイト代しか入らないのに(兄に煽られたのもあるが)ネットができる40万円のPCを買ったのだが、それが今につながっている。

校長のこういう性格もそうそう治らないから仕方がないのだが、同じような性格の人は、価値があることだと感じたら、意識的に抵抗を乗り越えたほうがいいだろう。校長の中には「なんでもっと早くやらなかったのか」がたくさんあるが、それは本当にもったいないことである。そして慎重な人が興味を持ったことというのは、たいがい、やらないよりやったほうが良いことばかりだろう。慎重な人は、よほどの可能性をその先に感じないと、興味を持つところにすら至らないからである。だからなおさら、興味を持ったことには、意識的に、多少無謀とも思えるような第一歩を踏み出したほうがいい。

なんでもっと早くやらなかったのか、になりそうなことを感じるセンサーを身に着けてほしい。その上で、意識的に乗り越えてほしいと思う。