タイトル「信じたことが近づいてくる」
▼下記の事例を読んで正しいと思うものを一つ選んでください。
挿絵【事例】

とある高校生の女A子は、ここ半年ほどの間、部活の先輩に片想いしていた。先輩といってもさほど遠い関係でもなく、部活の同じ係で接点も多いし、部活以外でも連絡を取り合ったりしていた。

ただそれ以上の発展はさせることができなかったのである。先輩のことを好きだという人が実は二人ほどいて、自分よりも先輩と仲良くしているように見える。それに先輩はもう三年生で受験も視野に入っており、自分と関わっていたら迷惑かなとも思ったし、受験なのに恋愛なんて何を考えているんだと思われるのも怖い。そうこうして思い悩んでいるうちに、先輩に彼女ができて、A子は絶望したのであった。
▼選択してください。
sentiment_satisfied 不正解です。正解を選び直してください。

× 閉じる
sentiment_satisfied 正解です!下記の解説(コラム)を読んでください。

× 閉じる
play_arrow A子は実は先輩と付き合いたくなかったと言える play_arrow A子は勝手に悪い方へ考えすぎたと言える play_arrow A子はちゃんと行動すれば先輩と付き合えたと言える

【校長の解説】

挿絵A子が行動を素早く起こしていれば先輩と付き合えたかは分からない。だが少なくとも言えるのは、A子は付き合える確率をどんどん自ら押し下げていた、ということである。先輩に嫌われたり先輩の気持ちを探るのが怖かったのだから仕方がないが、それにしても悪い方に考えすぎた。

先輩を好きだという人は二人いて、A子は気持ちでやられていた。先輩は受験生であり、A子は自分だけで「関わったら迷惑かも」と思い込んだ(実際は、先輩に彼女ができたように、受験はあまり関係なかった)。A子が先輩にアプローチして断られたわけでもないし、アプローチしてみて気がないことを感じ取ったわけでもない。全てはA子の脳内で作られた「恐れ」によって、この恋愛を成就させるほうへ動かさなかったのである。そうこうしているうちに、先輩には彼女ができた。

A子は自ら進んでこの恋愛を壊したわけではない。しかし、この恋愛はきっとダメだ、付き合えない、という思いが強く、それに反する行動は取れなかったし、A子が思い込んでいた方向に現実を引き寄せたのである。

我々は脳内で強く信じていることに、現実を引き寄せようとする。問題文のA子は、先輩と付き合うにはどうするか、どうすれば先輩と付き合えるか、という方向で練ったことはおそらくなかったろう。付き合えたらどんなに素敵だろうとか、先輩の横にいる自分を、きっとイメージできていなかったろう。イメージまでしなくてもいいのだが、そこに向かっていくという気持ちは必要である。そこに向かっていくつもりがないと、現状を嘆きながら悪い方に考え、諦め気味の動き方をして、絶望という結末を待っているような形になってしまう。もしA子が先輩と付き合えるとしたら、先輩が奇跡的にA子を好きでいてくれて自分から動いてくれたという、他力本願しかない。A子がそれっぽい動きをしていれば、もしかしたら先輩も「好かれたら好きになる」状態で、反応したかもしれない。自分で終わらせるほうに導くのとは確率が全然違うだろう。

我々は、信じていることに沿った行動ばかり取るし、それに反する行動は取らないから、信じている結果を引き寄せてしまうのである。物凄く単純に言えば、校長は歌が上手くないし上手くならないと思い込んでいるから(それは妥当だろうが)、歌の練習をしないし、カラオケ大会に出ないし、もちろんスカウトも来ないし、歌手になる可能性は皆無である。歌手になりたいという願望もないからそれはそれでいいのだが、願望があるのにそう思い込んでしまうとしたら、これは残念である。しかしなかなか「上手くなれる」と信じるのは難しい。音楽の授業で女子に笑われた実績もあるし、中学時代の彼女にドレミファソラシドを歌わされてひどくダメ出しされた実績もあるし、合唱のようなものから一人だけ外された経験もあるし、それを覆して「上手くなれる」と信じるのは難しい。だからたぶん、歌手になりたくても、なれないという現実を引き寄せてしまう。

信じたことに反する行動を取るのが難しいというのは確かなのだが、その度合いはそれぞれ違う。本当に無理なことを意識付けだけでなんとかすべきとは思わないが、せめて極端な決めつけをやめるとか、信じようとすれば信じられる程度のことならば気持ちを強く持つとかで、結果を左右できることも多い。左右できるところは、できるだけプラス方向に動かしていこう、と言いたいのである。

信じたことは、近づいてくる。良い方向に信じたことはそのままに、悪い方向に信じたことは、できるだけ手放したり覆したりしたいものである。