タイトル「怒りという防衛」
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挿絵【事例】

とあるカップルの彼氏は、彼女と付き合う前はタバコを吸っていたが、付き合うときに禁煙することを約束した。だが付き合って一カ月が経ったころに隠れて吸っていたことが判明し、そのときは少し険悪になった程度で済んだのだが、半年が経ってからまた隠れて吸っていることがバレたのである。

彼女はもちろん不満を抱き、彼氏を責めたのだが、「お前がごちゃごちゃ言うから隠れて吸いたくなるんだよ」とか「お前だって、ダイエット中に大福買っちゃったとか言ってるだろ」などと反論してくるのである。彼氏はいつも最後には彼女を悪者にするし、そのめちゃくちゃな理屈に彼女はイライラするのであった。
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play_arrow 彼氏は多少は自分が悪いと感じていると言える play_arrow 彼氏は実はかなり反省していると言える play_arrow 彼氏はタバコを吸って良いものだと考えていると言える

【校長の解説】

挿絵禁煙する約束を二度も破った彼氏は、どう考えても悪いことをしたのだが、彼女に謝るどころかむしろ彼女のせいにしているし彼女を攻撃している。ダイエット中に大福を買うこと(自分との戦いに敗れること)と、相手との約束を隠れて破ることではだいぶ違うが、そんな例まで出して彼女を責め立てている。彼氏は自分のことを悪いと思っていないのだろうか、というとそれは微妙である。

彼氏は自分が悪いことをして彼女に責められると分かっていたのである。罪悪感があって、うわ責められたくないと感じたからこそ、すぐに跳ね返す方向に出た。罪悪感は感じたが、グサッと心に深く突き刺さる前に言い訳して逆ギレして、彼女の非を作り出そうとしたのである。言ってみれば、罪悪感は感じたが、罪悪感を感じ続けるキャパがとても小さく、言い逃れや逆ギレをしなければやっていられない人なのである。彼氏は自己嫌悪になって深く落ち込み続けたり、反省してしょんぼりするということは、ほぼできない性格だと言えるだろう。自分に刃を向けたまま苦しみ続けることが苦手で、よほど反論の難しい、ぐうの音も出ないようなことでも起きないと、自分を責めたり反省するということができない性格だと言える。

「怒り」というと攻撃的なイメージがあるが、それは「深く傷つけられないための防衛」としてもよく使われるのである。ハリネズミの針は、自分から相手を仕留めるためというより、自分が攻撃されないためにあるだろう。「怒り」というのも、自分が悪いとか自分の価値がないと感じないように、罪悪感や無価値感の直撃を避け、意識を外にそらす効果がある。人を攻撃しまくっているときには、自分のことを振り返らずに済む。

「怒り」だけでなく、例えばあの芸能人の顔がどうだとか、政治家の悪口だとかを言っているときには、自分のことは棚に上げていられるし、ましてやそれがネット上だったら自分に矛先が向くことはないから気楽である。このように、外に意識をそらすということが、精神衛生を保つためにはよく行われる。

「怒り」に話を戻すが、ここまで「深く傷つけられないための防衛」という風に説明したものの、言い訳のように痛みをそらすだけでなく、もちろん単に心の痛みを強く表明したいときにも使われる。ただそういうときでも、痛みに心がやられないように、怒ることで気持ちを麻痺させ一時的にでも本人を強くいさせるという効果があり、だからこそ無意識はその人(の自我)に「怒り」という感情を送り込んでくるのである。「怒り」というのはやはり防御的な側面が強い。そして痛みを麻痺させて怒りまくった後には、少し冷静になり、思い切り落ち込むということが多い。悲しみなどを麻痺させていたから、怒りという麻酔がなくなってからは、じっくり傷つくのである。

今日は「怒り」という攻撃的な感情には、自己嫌悪や痛みの直撃を避けたり和らげる効果がある、ということを覚えておいてほしい。誰かが怒っているとき、その人は、何か背負うべきことから逃げているか、または心の中で泣いているのかもしれない。