タイトル「意識という壁」
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挿絵【事例】

とある女は、友達から、とある男を紹介されてデートすることになった。なかなかカッコイイ人だし、学歴も良くて、自分にはもったいないぐらいの人だと思ったのだが、会ってみるとなんだか全然ドキドキしないのである。

確かに人としては素敵なのかもしれないが、カッコつけたがりだったり、うまいこと言いたい感とか、いかにも良いお店を知っています感とか、入念にデートを準備された感とか、いろいろなものを感じてしまって彼に惹かれずに終わったのであった。
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play_arrow 彼は自然体や素直さから遠すぎたと言える play_arrow 彼女は相手の重さを感じて嫌になってしまったと言える play_arrow 彼女は好かれると逃げるタイプだと言える

【校長の解説】

挿絵彼女にしてみれば、彼は条件こそ良くて素敵な人であったが、このデートではいまいち気持ちが入らなかった。初回ということもあって当然かもしれないが、決してそればかりが理由ではなかった。

彼女が感じた「カッコつけたがり」「うまいこと言いたい感」「いかにも良いお店を知っています感」「入念にデートを準備された感」というのは、いったいなんだろうか。その正体は言葉になりにくいが、しかし言葉にできなくても、なんだか入っていけない感じというのはイメージできるのではないだろうか。

彼は、いかにも良く思われたいとか、こういう風に見られたいとか、とにもかくにも人為的で作為的だったのである。校長は心の本能的な部分や無意識的な部分を「自然物」として捉えるが、彼の行動は自然物からやってきたものではなかった。どちらかというと意識的で人工的な心で彼女に接していたから、彼女も構えてしまった。

例えば二人が共通のテレビ番組について話していて、おかしくて二人とも笑ったとき、二人は「あ、いま心がつながってる」とか「私どう見られてるかな」などとは考えないだろう。人が心の底から笑っているときというのは、自然物に心が支配されるから、ふと意識が取り外されるのである。その感覚たるや不思議なもので、その瞬間に自分が何を考えていたのかなどは、思い出せないのである。自然物になりきっているから、余計なことを考えない。笑うのをやめてから考えるのである。

問題文の彼は、非常に意識的であった。意識というのは、間違いのないように「きちんと」するときにはうってつけだが、我々が本能的に持つ「心と心をつなぐ」という能力を発揮するときには壁になってしまう。彼はそうやってしっかりした壁を置いてしまったから、彼女はなんだか一緒にいても気持ちが入っていかないし、好きという気持ちも発動しなかったのである。彼という人がどういう人なのかも、感じ取れなかったのではないだろうか。我々は自然体で素直で、その人そのものを感じられるときに、愛情が湧く。

例えばこちらをチラチラ意識しながら部活をやっている男子がいたら、まずほとんどの人がカッコ悪いと感じるだろう。しかし部活にただ打ち込んでいる人を横から見るのは、自立心を感じるというのもあるし、意識という壁がこちらに向いていないというのもあって、好きになりやすいのではないだろうか。例えば天然と呼ばれる人が男たちからカワイイと思われていても、その人がかわいく思われたいと思って行動したときには(それがバレたときには)、うすら寒くなるのである。

意識というのは、間違いのないように「きちんと」するときにはうってつけだと言ったが、恐れを抱いている人などは心がディフェンシブになって、間違いのないように振る舞うことを第一とするだろう。だから心を守り過ぎること、恐れ過ぎることもまた、心でつながることを難しくしてしまう。問題文のようにカッコつけたり良く思われたいというときばかりではない。防衛の心理そのものは「自然物」だが(だから単に恐れを抱いている人はかわいかったり共感しやすかったりするが)、それゆえに行動を意識的にしすぎてしまうと、人工的な風味が強まってしまうのである。といってもある程度は仕方がないのだが。

初回のデートは、ドライブをしたり散歩をしたり動物園を歩いたりして気をそらしたり、少しお酒を入れて自我を緩めたり、カラオケやボーリングやビリヤードなど何らかのアクティビティが多少あると、打ち解けやすいだろう。まぁいきなりしっかり話し込んでもすぐに仲良くなれるような、自我の緩い人や、相手の自我を緩めるのが得意な人ならばべつになんでも良いのだが、そういう人以外は、いきなり話し込む場を用意するとなかなか意識の壁を取り払えず、打ち解けられないものである。

意識は、心をつなぐ壁になる、ということを今日は覚えておいてほしい。