タイトル「認識の歪み」
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挿絵【事例】

とある女は30歳で、もう何年も前から結婚したいと思っている。そして合コンや婚活パーティなどにも行ったりするのだが、なんだか良い感じの人と良い展開になっても、途中でがっかりすることが多い。例えば相手に地方転勤の可能性があるとか、少し人の気持ちが分からないタイプだったとか、理由はいろいろである。

そして彼女は、ここ二年で、二人の男と不倫も経験した。自分からいいなと思う人、かつ失望しないような魅力的な人はたいがい既婚者であり、未来がないと分かりながらも「何もないよりまし」だと思ってのめり込む。そして最終的につらくなって自分から離れるのであった。
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play_arrow 実は彼女には結婚したい気持ちがないと言える play_arrow 結婚できない理由は不倫しているからだと言える play_arrow 不倫していることと結婚できないことは無関係とは言い切れない

【校長の解説】

挿絵「不倫していることと結婚できないことは無関係とは言い切れない」という選択肢は、そりゃそうだという選択肢ではある。だいたい心のことで無関係と言えることなどほとんどないだろう。だがもう一歩踏み込んで言うと、「不倫していること」と「結婚できないこと」は大いに関係がありそうだ、とも思える問題文なのである。

それは「不倫していると幸せを逃すから」という薄い関連性ではない。もっと濃厚な関連性である。

そうだそうに違いないと言えるほどのことではないが、問題文の彼女は、そもそも結婚したくない心理も抱えているのではないだろうか。結婚したい、も本当だろう。だが、例えば彼女の育った家庭環境が悪く、結婚を絶望するような心理を持っていたり、彼女が今まで彼氏に苦しめられた経験があって結婚を恐れているとか、自分の依存心からして捨てられるに違いないという不安を抱えているとかなら、どうだろうか。それらは仮説に過ぎないが、その仮定をして問題文を眺めてみると、だいぶ見え方が変わってくる。

例えば、結婚したい気持ちがありつつ、結婚したくない心理を抱えている人というのは、なんだかんだと結婚できなさそうな人との恋に陥ることが多い。それはまた別の日にでも細かく語るが、ちゃんと愛してくれそうな人より、余裕を持って転がしてくれそうな人、特に自分になびくことがなさそうな既婚者が相手だと、少しほっとして居心地が良かったりする。辛い恋愛になるけれども、ちゃんと恋愛して結婚していく不安をずっと抱えずに済む。そういう理由で、なんだかんだ不倫に陥る確率が高いのかもしれない。真っ当な恋愛を避けたい気持ち、未来がない恋愛にほっとする気持ち、既婚者の余裕がかっこよく見えること、親のように甘やかしてくれること、などによって恋愛がふるいにかけられ不倫が高確率で残るのかもしれない。

合コンや婚活パーティで知り合った人についても、もし結婚を恐れたり、どこかで終わらせたい心理があって、「相手に失望するポイント」を探してしまうのかもしれない。純粋に結婚したいだけなら、相手に多少の問題があっても、結婚してもいい解釈をしようと試みるものである。地方転勤の話を聞いても「それぐらいのリスクは誰にでもあるか」とか「これぐらいで結婚できない理由にしていたら誰とも合わないし、そういうのは仕方がない」とか思いたがる人もいるだろう。しかし結婚したくない心理を抱えていれば、ありとあらゆるポイントで「ほら無理だ」「あーこりゃダメだ」と思いたがるのである。これによって当然、相手にがっかりして終わる確率がグンと上がる。

結婚したくない心理を抱えていること自体は、仕方のないことである。結婚に限らず、彼氏ほしいと思っていても実は恐れているとか、そういう人もいるだろう。そういう心理自体は仕方がないことである。最大の問題は、自覚がないことだろう。本人にしてみれば「地方転勤がありそうならダメだ」「相手は人の気持ちが分からない人だ」という、ちゃんとした説明可能な理由を持っているから、自分の心理を疑わないのである。単に出会いの運が悪いとか思っていたりする。

自覚があれば結婚できるようになるのか、といえばそうではない。しかし自覚があってこそ、自分の心理との葛藤がスタートできるし、戦い始められるのである。本当は怖い、本当は不安だ、本当は凄く凄く結婚したい、そういう生々しい気持ちが出てこないと、なかなかスタートラインにも立てない。

ちなみに先に書いた通り、問題文の解釈は、あくまで仮説である。単に、好かれた人のことはいまいち好きになりづらく、魅力的な人には誰かしら彼女や妻がいる、というだけのことかもしれない。とりあえず彼女は「もしかして結婚したくない気持ちもあるのでは」という前提で自分を掘り下げてみるといいだろう。

自分の素直な気持ちに何かをかぶせてしまって認識が間違っていることもあるから、自分の気持ちを紐解こう、という話ではある。だがもっと限定して言うなら、「○○したいのにできない」というときには、「○○したくない気持ち(恐れ)」が隠れているかもしれない、という話である。